シャープが4月に発表した、裸眼で3D(3次元)映像が楽しめる液晶ディスプレーの開発を手がけた。コンピューターソフト開発者から転身し、液晶での3D表示技術の研究を続けて15年。異分野から“参戦”した異色の技術者が、困難を乗り越え新時代の液晶技術を確立した。
「いつまで3Dなんてやっているんですか」。3D液晶の研究を始めて10年たった平成17年ごろ。社内でこんな指摘を受けたという。実は15年に携帯電話用のディスプレーで、3D液晶を量産したことがあった。
このときも裸眼で3Dを楽しめる点が売りだったが、映像の粗さが目立つなど消費者の受けは今ひとつ。結局、2機種を出しただけで生産は終了した。 「実用化で浮かれていたのですが、奈落に落とされた感じでした」と振り返る。
プロジェクトメンバーは減り、社内でも冷たい風が吹く。そんな雰囲気を吹き飛ばそうと17年に開発したのが、1画面の右側と左側で違う映像を楽しめる「デュアルビュー液晶」だ。カーナビなどに搭載され、話題を呼んだ。狙ったのは、残されたメンバーの士気を高めることだ。「3Dへの思いが強くても、何か形になるものを生み出さなければ、気持ちが盛り上がらない」ためという。
「デュアル」には、今回発表した3D液晶の基になる技術が詰め込まれている。3Dとは直接関係なくても、将来を見据えた開発を続けた。今回の3D液晶は、以前の機種に比べ、明るさ、画面の面積とも約2倍に。完成度の高い商品に仕上がった。薄型テレビを中心に3Dブームが到来しつつある今年、2度目のチャレンジでリベンジを果たした格好だ。
研究を続けられたのはなぜか。「われわれは身の回りの物体を3Dで見ている。ディスプレーも3Dが自然」という信念をもち続けたという。ソフト開発から出合った3D液晶だが「腰を落ち着けるテーマと思った」と振り返る。「液晶の可能性はまだまだ大きい。これまで考えつかなかった使われ方が出るはず。開発を続けたい」と液晶一筋への思いを語る。-産経新聞
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